八岐の大蛇(やまたのおろち)?なあに〜それ。そんなの知らないわ−と云うあなたに。
ここでは昔話風にアレンジしてお届けしますのでお楽しみ下さいね。
天照大神(あまてらすおおみかみ)には素戔鳴尊(すさのおのみこと)という弟神がおったのじゃが、高天原(たかまがはら)では悪さばかりしておってのお。大神は弟が成すことゆえ大目に見ておったのじゃが、とうとう我慢しきれず、天岩戸(あまのいわと)にお隠れになってしもうたのじゃ。天照大神は陽の神さまじゃあ、お隠れになってしもうたからさあ大変。漆黒の闇が広がるばかりでどうにもならん。萬(よろず)の神々が手を尽くして何とか大神を岩戸から引っ張り出したのじゃ。そうして命(みこと)の悪業にほとほと困り果てた萬の神さまたちは命を皆して責め立て、根の国へと追い払ってしもうたのじゃ。
さてはて高天原を追い払われてしもうた素戔鳴尊じゃが、出雲国の斐伊川に差し掛かった時のことじゃった。川上から泣き声が聞こえて来てのお、その泣き声を頼りに川を遡ると、そこには娘を間にして老いた夫婦が泣いておったそうじゃ。命が−そなた達は何者じゃ、なぜそのように泣いておる?−と訊ねたところ、−私はこの辺りを治める脚摩乳(あしなづちのみこと)と申す者にございます。これなるは手摩乳(てなづちのみこと)と申す妻にて、娘は奇稲田姫(くしいなだひめのみこと)と申します。吾等には8人の娘が御座いましたが、毎年八岐の大蛇に呑まれてしまい、とうとうこの娘一人になってしまいました。逃れる術を知らずして悲しみにくれているところにございます−と。それを聞いた命はその姫を貰い受けると、たちどころに櫛に変えて角髪(みずら)に刺してしもうたそうじゃ。
そうして命は老夫婦に命じて8回も絞り重ねた強い酒を造らせ、八つの酒樽を置いて大蛇を待ち構えたそうじゃ。果たして大蛇が現れたのじゃが、頭も尻尾も八つあるという化け物で、眼は真っ赤なほおずきのようじゃったそうな。見つけた酒樽の一つ一つに各々頭を突っ込んで酒をあおった大蛇もさすがに酔うてしもうてのお、眠ってしもうたそうじゃ。それを見届けた命はすかさず腰の十握剣(とつかのつるぎ)を抜いて大蛇をずたずたに切り刻んでしまったのじゃ。ところがじゃ、大蛇の尻尾を切り刻もうとしたときのことじゃった。命の剣が刃毀れしてしまってのお。不思議に思うた命が切り裂いてみると、そこからは剣が出て来たそうじゃ。それこそ後に伝わる草薙の剣じゃった。命は−この剣は不思議な剣じゃ。吾如きがどうして持っておられようぞ−そう云って姉神の天照大神に献上したそうじゃ。
そうして命は奇稲田姫と婚姻する場所を求めて最後に辿り着いたのが出雲の国の清地(すが)と云うところじゃった。命は−吾が心、此の地に到りて清々しいものよ−と云うと、そこに宮殿を建てて住んだそうじゃ。そのときに命が詠まれた歌が−八雲立つ 出雲八重垣 妻籠めに 八重垣つくる その八重垣を−と云う歌じゃ。奇稲田姫と遘合(みとのまぐあい)して大己貴神が産まれたのじゃが、その命もやがて根の国に赴いて行ったそうじゃ。とんと、むか〜し昔のお話しじゃけんども。
この婚姻はそれまでの略奪結婚の風習を破り、両親の承諾を得て行われた最初の正式結婚なのだそうよ。
と云っても、あくまでも神話の中でのお話しだけど。
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